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「歩く権利」から生まれたイギリスのフットパス

イギリスでは、以前から公園を歩いたり、ガーデンセラピーで心身を癒やしたり、という習慣が国民に広く浸透しています。
コロナ禍でその要望はますます広まっているようです。
とくにウォーキングはさかんで、成人の半数を超える人たちが、1カ月に5km以上歩くとの報告もあるほど。
その人気を支えるのが「パブリック・フットパス」の存在。国内に蜘蛛の巣のごとく張り巡らされた、文字通り歩くための公共の道が整っているのです。
出典 Beyond Health
自然の静寂に耳を澄ます

「音響生態学」の第一人者・ゴードン・ヘンプトンは、自然のサウンドスケープ( 音の風景)を求めて、40年間世界中を歩き回っています。彼の活動の原点は、ワシントン州のオリンピック国立公園内に設置した「静寂の1平方インチ」。以来、ヘンプトンは、人々が日常的に静寂に浸れる場所を世界中に確保することを目指して、活動を続けています。
コロナ禍で、車の音が減った時期、これまでより、公園の鳥のさえずりがよく聴こえた、と感じた方がいるのではないでしょうか。「鳥の声が聞こえるのは、そこが豊かな生息地であることを意味する」と、ヘンプトンは言います。また、騒音からのがれた静かな音環境は、認知能力と創造性を高め、ストレスレベルを下げることが、各国の研究で明らかになっています。
ときには道路から離れた緑の空間で、音楽やYou Tubeからも一時的に離れて、鳥のさえずりや水のせせらぎに、耳を傾けてみましょう。
不安やストレスを軽減。「森林セラピー」の健康効果

「森林浴」は、森林や樹木のもつ癒やし効果を活用して、森の中でゆっくり散策したり安息したりすること。
「森林セラピー」は、科学的根拠にのっとった森林浴の方法で、健康増進効果が認められる森で、不安やストレスを和らげるウェルネスのプログラムです。
日本の森林セラピーソサエティが2000年代に始め、同団体を通して、世界各国にこの手法が広まっています。日本では、森林セラピーソサエティが認定した森林セラピーガイド又は森林セラピストが、日本各地の認定された森で、プログラムを実施しています。オーストラリアでは、公認森林セラピーガイド(the International Core Curriculum on Forest Therapy”ICCFT”が認定し、トレーニングを行う森林セラピーガイドとして認められた人)によってプログラムが行われています。
森林浴や森林セラピーで大切なのは、森の中で、マルチタスクやスピーディーな判断から心身を解放し(仕事やスマホはすっかり忘れて)、スローダウンしたオフの状態に身をまかせることです。
樹木の香りを感じ、鳥のさえずりに耳を傾け、水辺の清涼な空気に包まれて、深い呼吸を重ねることで、メンタルヘルスが改善します。森が苦手な人や、つねにオン状態でいることが心地良い人以外は、森林浴や森林セラピーを体験したとき、森林環境の限りない癒やし効果に驚かされるでしょう。
樹木がもっさり茂り、遊歩道が整い、安心して散策できる森林や公園の中を、ゆっくり歩いたり、ベンチに腰かけてぼんやりしたり、深呼吸を重ねながら、20分ほど過ごしてみてください。気持ちがオンからオフに切り替わった、フル回転していた脳がちょっとスッキリした気がする、そのような感覚は、森林浴があなたに効いているサインです。